1 事案の概要
戸建て住宅の新築工事に関し、注文主が瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、請負業者が追加工事及び減工事による未払請負代金支払請求を行った事案です。
主たる争点としては、①請負代金の合意の有無、②見積書に記載の未施工工事が、未施工の瑕疵にあたるかコストダウンのために中止したものか、その他工事の施工内容が瑕疵にあたるか、③追加変更工事の合意があったかです。
2 裁判所の判断
(1)請負代金の合意について
当初見積額について施主が異議述べている事実があることから、当初見積額での合意を否定した。一方で、施主が建物の現状を確認して追加の請負代金を支払ったこと、支払時に後日の精算について言及していなかったこと、その後も訴訟まで特に返金等の精算を求めなかったことなどから、少なくとも注文主が支払った金額の限度で合意は成立しているとした。
(2)瑕疵について
当初見積額から請負代金を減額していることから、当初見積書に記載された内容のすべてが合意されているものではなく、コストダウンにより中止されたものや施工内容が変更されたものがあるとし、見積書と異なる部分が通常のコストダウンとして合理的(注文主が特に設置をこだわっていたとか、必須ではないもの)であるとして瑕疵に当たらないとした。
その他複数の瑕疵については、一般的施工水準に達しているか、機能上問題ないかという観点から瑕疵を判断している。具体的には、換気扇の設置位置が設計図と若干異なっている点について、換気性能として問題ないことから瑕疵ではないとした。一方、車庫内の木製棚が給湯器の側方に近接して設置されて防火性能を満たしていない点について、注文主の意向を尊重したとの請負業者の主張を施主が防火性能まで理解していたとは言えないとして瑕疵とした。
3 コメント
請負契約の内容に争いがある場合、見積書や設計図書の内容、交渉経緯(異議の有無等)、請負代金額などを参考に判断されます。また、瑕疵の有無の判断については、一般的施工基準に達しているか否かが一つの基準となります。機能重視の設備等については、設計図面と多少位置が異なるなどしても、機能上問題なければ瑕疵とならないと判断される傾向にあります。一方、施主の要望通りに施工しても、それが機能上、法律上問題となるにもかかわらず、請負業者が注文主に対して問題を指摘せずにそのまま施工したような場合は瑕疵と判断される傾向にあります。
(2022.10.27)