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管理組合法人が法人設立前の理事長に対し、不正な支出があったとして債務不履行に基づく損害賠償請求した事案(東京地判令和3年6月25日)

1 事案の概要

 本件は、区分所有建物の管理組合法人である原告が、法人となる前の管理組合の理事長であった者に対し、同人が同組合の経費を不正に支出したこと及び区分所有者に対する管理費等の請求を怠り、請求権を時効消滅させたことにつき、職務を誠実に行う義務に違反した債務不履行があるとして、損害賠償請求した事案。

2 裁判所の判断

 管理組合の理事長(区分所有法上の管理者)は、管理組合に対し、善管注意義務を負い(区分所有法28条、民法644条)、管理規約上も、法令、規約及び使用細則ならびに総会の決議に従い、組合員のため、誠実にその職務を遂行する義務する義務(誠実義務)を負っていたほか、通常総会を招集した上で、毎会計年度の収支予算案を提出し、その承認を得たり、前会計年度の収支決算案を報告し、その承認を得たりする義務を負っていたとし、総会の承認を得ないで、自分の報酬を増額し、コンサルタントやトランクルームと契約してその費用を支払い、外部の者との飲食代や手土産代を支払い、相当性のないタクシー代を支払い、未払管理費の一部について時効中断手続きをとらなかったこと等について債務不履行責任を認めた。なお、元理事長から他の理事等の監視義務違反についても主張されたが、元理事長の責任の有無に影響はないとした。

3 コメント

 理事長は、善管注意義務を負っていますので(区分所有法28条、民法644条)、義務違反があれば債務不履行責任を負うことになります。また、違法行為があれば不法行為責任を負うことになりなす。なお、本件は、債務不履行責任を問われていますので、弁護士費用については請求されていません。

(2022.10.31)